IMDスマートシティインデックスは多角的に評価する国際的なランキング

Society 5.0 & Smart Cities

IMDスマートシティインデックス2025は、スイスの国際経営開発研究所(IMD)と、シンガポール工科デザイン大学(SUTD)が2019年から毎年共同で発表しているスマートシティのランキングで、このインデックスは世界146都市を対象に、都市のインフラ整備状況(構造)と技術利用度(デジタルサービスの成熟度)の2つの視点から評価しています。

調査は市民へのアンケートに基づき、「健康と安全」「移動性」「活動」「就労・学習の機会」「ガバナンス」の5つの主要指標を分析し、経済・技術面だけでなく、生活の質や環境、包括性といった「人間的側面」とのバランスも重視されています。

評価はAAAからDまでの等級で示され、都市ごとの前年度との比較も公表されています。

このランキングは、都市が持続可能かつ人間中心のスマート化をどの程度進めているかを可視化し、政策立案の参考や都市間の競争力評価に役立てられていて、2025年には新たに6都市が加わり、住民の住宅の手ごろさが重要な課題として浮かび上がっています。

簡単に言えば、IMDスマートシティインデックスは都市の生活の質向上にどれだけ寄与しているかを、多角的に評価する国際的なスマートシティランキングです。

IMDSG Analytics
主眼生活満足度+経済+持続可能性技術導入・デジタル化の進展
対象都市世界146都市技術先進都市に絞る傾向
強み総合的な都市力評価技術面の先進性評価

IMDインデックスはより幅広い指標とデータを用い、市民の生活品質や持続可能性にも配慮した総合評価であるのに対し、SG Analyticsのランキングは市民アンケートに基づく技術・サービス充実度の評価に重点を置いていて、両者は評価軸にやや差異があり、それぞれの用途や対象者によって利用される指標となっています。

インドに拠点を置くリサーチ会社SG Analyticsがまとめたランキングは、技術活用度とデジタル化の進展に重点を置いていて、評価軸は、テクノロジー・インフラ(IoT、スマートグリッド、公共WiFi)、持続可能性・環境政策、交通・モビリティ、公共サービス(e政府、教育、医療など)、市民参加とガバナンス、経済競争力で、同社の記事によると、2025年の主要スマートシティにはシンガポール、ドバイ、東京、コペンハーゲン、ヘルシンキ、チューリッヒなどが挙げられていますが、統計的根拠や評価方法が明示されていないため「参考指標」として扱うのが適切です。

IMDスマートシティインデックス2025の結果は以下の通りです。

1.チューリッヒ(スイス) AAA評価で3年連続1位

2.オスロ(ノルウェー) AAA評価で2位

3.ジュネーブ(スイス) AAA評価で3位に上昇

4.ドバイ(UAE) A評価、12位から4位へ大きく順位を上げた

5.アブダビ(UAE) A評価、10位から5位へ上昇

6.ロンドン(イギリス) AA評価、8位から6位へ上昇

7.コペンハーゲン(デンマーク) AAA評価、6位から7位へ微減

8.キャンベラ(オーストラリア) AAA評価、3位から8位へ下降

9.シンガポール(シンガポール) AAA評価、5位から9位へ下降

10.ローザンヌ(スイス) AAA評価、7位から10位へ下降

中東のドバイとアブダビが特に大きく順位を伸ばし、スマートシティ技術やデジタルインフラの進展が顕著で、スイスの都市群は市民中心のインフラ整備とイノベーションが継続的に高評価を得ています。

IMDスマートシティインデックス2025における日本の順位は、東京が86位で、評価はスマートシティ全体がCCC、インフラの整備状況はB、技術利用度はCCC、大阪は95位という結果で、これらの順位は、韓国のソウル(13位)、香港(41位)、中国・北京(69位)、マレーシア・クアラルンプール(74位)、タイ・バンコク(76位)に比べるとやや低い状況です。

日本の主要都市はスマートシティ化の取り組みが進んでいるものの、世界的に見ると改善が必要な状況で、都市のインフラやデジタル技術の整備と利用の進展が、他国の主要都市に比べて遅れていることが指摘されています。

この結果は、都市がいかに技術とインフラを活用して市民の生活の質を向上させているかを示す重要な指標となっています。

一方、スマートシティ導入で想定される主要なリスクと影響は以下の通りです。

  1. システム障害リスク
    大規模で複雑なICTシステムが故障・障害を起こすと、都市の交通、エネルギー、水道などのインフラや公共サービスが停止し、市民生活に大きな影響を及ぼす可能性があり、事前に予備システムや代替手段の準備が重要です。
  2. サイバー攻撃リスク
    IoT機器やネットワークに対するDDoS攻撃やマルウェア感染により、重要なシステムがダウンしたり、個人情報が流出したりする危険があるため、高度なセキュリティ対策と運用体制が必要です。
  3. プライバシー侵害や監視社会化
    街中に設置されるカメラやセンサーによる大量の個人データ収集が、住民のプライバシー保護の懸念につながり、透明性のある運用や適切な情報管理が求められます。
  4. コスト負担と費用対効果
    先端技術導入やインフラ整備には多額の費用がかかり、維持管理も継続的に必要で、市民や自治体の合意を得るためには、費用対効果の明確化が欠かせません。
  5. デジタルデバイド(情報格差)
    高齢者やITに不慣れな層がスマートシティサービスを利用しづらくなることで、社会的不平等が拡大するリスクがあるため、デジタル教育やアクセシビリティ対策が必須です。

これらの課題を踏まえ、技術的な安全対策に加え、社会的・運用的な側面も強化しつつ段階的に導入していくことが望まれています。

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