宇宙・高高度技術は基盤技術として不可欠だが新たな安全保障リスクと倫理的課題をもたらしている

Space & Advanced Science

宇宙・高高度技術とは、地球大気圏外(宇宙空間)や成層圏〜宇宙にまたがる「高高度領域」での情報収集、通信、攻撃、防御を可能にするさまざまな先端技術の総称で、この分野は今後の安全保障・通信インフラ・資源開発・国際協力の要となる領域で、法規制や持続可能性への配慮もますます重要になります。

宇宙・高高度技術は、情報優越(ISR=Intelligence, Surveillance, Reconnaissance)、グローバルでシームレスな通信、精密攻撃・防御を実現する『現代戦の基盤』となっています。

各国は、軍事・民間両面で、この分野の能力拡大と防護(リジリエンス強化)に注力していて、宇宙ドメインの争奪と安全保障に直結しています。

主な法律高度の目安対象技術・活動例
宇宙技術宇宙活動法・宇宙条約80〜100km以上(慣行)人工衛星、宇宙ステーション、宇宙ロケット
高高度技術航空法等+独自法20〜80〜100km高高度無人機、気球、サブオービタル機体

宇宙技術の法的定義
◇宇宙活動法(人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律)
• 「人工衛星」とは、「地球を回る軌道、若しくはその外に投入し、又は地球以外の天体上に配置して使用する人工の物体」と定義される(第2条2号)
• 「人工衛星等の打上げ」は、管理者がロケット等で人工衛星を軌道に投入する行為を指す(第2条5号)
よって、宇宙技術とはこの法律の対象となる「衛星の打上げ、管理、運用を含む技術活動」全般を指す

◇宇宙基本法
• 宇宙開発の基本理念や政策を定めていて、宇宙技術は「宇宙の開発及び利用に関する科学技術」であると位置付けられている

◇関連法規
• 衛星リモートセンシング法や宇宙資源法など、宇宙技術に関わる観測・資源開発技術も包括し、宇宙技術の領域は多面的である

高高度技術の法的定義
◇航空法とサブオービタル規制
• 航空法は主に地上から約20km前後までの航空機活動を対象としますが、その上の成層圏から中間圏(約20km~100km)における無人航空機(高高度無人機、HAPS)やサブオービタル飛行は、航空法と宇宙活動法の適用境界として議論されています

◇サブオービタル飛行の法的意味
• 高度100km程度まで上昇し、再び地上に帰還する飛行は「宇宙の入口」に位置し、既存の航空法と宇宙活動法の双方が関係し、法的な制度整備が進められています

◇近年の法制動向
• 法整備の議論では、高高度域の技術活動は「航空法」の枠組み内で扱うか、新たな「高高度活動法」等を設けるかが検討されていて、関連企業や研究者の運用管理、安全基準設定が進められている段階です

軌道上兵器と軌道兵器の違いは、用語の使われ方や定義のニュアンスにあります。

両者は、ほぼ同義で使われることもありますが、軌道上兵器は軌道にある兵器そのもの、軌道兵器は軌道に配置された兵器全般や、軌道から地上もしくは宇宙空間を攻撃する兵器まで含む、やや広い意味合いがあることが多いです。

軌道上兵器とは、「地球や他の天体の周回軌道上(宇宙空間)に配備・設置されて運用される兵器」の総称で、主に人工衛星や軌道プラットフォームなど、宇宙空間での攻撃や防御を目的とするシステムが該当します。

◇定義と概要
• 軌道上兵器は、「宇宙空間(軌道上)」に存在する兵器で、衛星攻撃兵器(ASAT)、軌道上から地上への攻撃兵器(例:神の杖、FOBS)、指向性エネルギー兵器(レーザー、マイクロ波)、ロボットアームによる物理的捕獲・破壊兵器などが含まれます

• 国際的な宇宙法(宇宙条約、SALT II等)により核兵器や大量破壊兵器の軌道配備は禁止されていますが、非核型・非大量破壊型の宇宙兵器は研究・開発が進められています

• 軌道上兵器には明確な国際的統一定義はないものの、「宇宙内で攻撃・防御目的で使用する兵器すべて」が幅広く含まれます

◇主な分類
• 衛星攻撃兵器(ASAT)
地球周回軌道上の人工衛星を破壊・機能停止させる兵器(ミサイルや直接衝突型衛星など)

• 指向性エネルギー兵器
レーザー、マイクロ波を利用し、衛星や宇宙機器を無力化・破壊する兵器

• 軌道爆撃兵器/軌道兵器
軌道上から地上目標に対して攻撃できるシステム(例:神の杖・部分軌道爆撃システム)

• ロボットアーム等による物理操作兵器
他衛星を捕獲・分解・無力化するためのマニピュレータ搭載型衛星

◇大別されるカテゴリ
• 地球対宇宙兵器
• 宇宙対宇宙兵器
• 宇宙対地球兵器

それぞれ「物理的手段」「非物理的手段(電子妨害、サイバー等)」へ細分できます。

最新ではレーザー・電子妨害・複合小型衛星群・自律型運用技術も拡大していて、単なる衛星破壊を超えて多様な攻防が可能なシステム群となっています。

宇宙条約により、大量破壊兵器の宇宙空間配置は禁止されていて、多くの軌道兵器開発は制限されています。

現代(2025年時点)においては、公式には運用可能な本格的な「軌道兵器」は存在しないとされていますが、多くの国は軌道上での監視や打撃能力を備えた宇宙システムの開発・研究を継続していて、特に防衛通信衛星や宇宙領域監視衛星の整備、ロボット衛星による軌道上メンテナンスや、改修ミッションの計画など、衛星運用の安全性・回復力強化の取り組みが活発化しています。

また、地上や洋上での最新兵器システムとしては、日本がレールガン(電磁砲)の実験を進めるなど、将来的な宇宙応用も視野に入れた高性能射撃兵器の技術開発もあり、国際的に見ても、対衛星兵器や「キラー衛星(攻撃的能力を持つ宇宙システム)」と呼ばれる攻撃的能力保有の動きに警戒感が強まっている一方、宇宙空間の安全利用を確保するための技術的・政策的対応が求められている状況です。

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