『Proba-3』で人工的に日食を作り出し太陽コロナの詳細な研究が可能になる

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Proba-3(Project for On-Board Autonomy-3)』とは、欧州宇宙機関(ESA)が計画した技術実証衛星で、2024年12月5日に日本時間19時34分に、サティシュ・ダワン宇宙センター(インド)から、インド宇宙研究機関(ISRO)のPSLV-XL13で打ち上げられました。

このミッションの主な目的は、人工的に日食を作り出し、太陽コロナを観測することや、精密な自律フライト・フォーメーション技術を実証することです。

Proba-3の特徴
• 2基の小型衛星で構成されている
• コロナグラフ衛星(CSC)と遮光ディスクを持つオカルター衛星(OSC)が約150mの距離を保ちながら編隊飛行
• 衛星間の距離誤差を1mmの精度で6時間にわたって維持することを目指している
• 極端な楕円軌道を周回し、近地点高度600km、遠地点高度60,530kmで運用
• 軌道周期は約19時間36分で、そのうち6時間をコロナの観測に費やす

Proba-3の主要な観測機器は、ASPIICSと呼ばれる太陽コロナグラフで、従来よりも太陽光球の縁に近い内部コロナの観測が可能になります。

Proba-3ミッションの具体的な目的

1.人工的な日食の生成:2基の衛星(OcculterとCoronagraph)を使用して、宇宙で人工的な日食を作り出し、太陽コロナを詳細に観測すること
2.精密な編隊飛行技術の実証:2基の衛星が約150mの距離を保ちながら、1mmの精度で6時間にわたって位置を維持する高度な編隊飛行技術を実証すること
3.太陽コロナの研究:ASPIICSコロナグラフを使用して、従来よりも太陽光球の縁に近い内部コロナを観測し、太陽大気とコロナの詳細な様子を明らかにすること
4.自律運用と精密操縦技術の革新:宇宙での自律運用と精密操縦に革命をもたらし、将来のミッションに応用可能な技術を開発すること
5.太陽活動の理解促進:太陽嵐、太陽風、太陽の総エネルギー出力に関するデータを収集し、太陽が地球に与える影響についての理解を深めること

これらの目的を通じて、Proba-3ミッションは太陽観測の新たなフロンティアを開拓し、太陽系科学の発展に貢献することを目指しています。

Proba-3のミッションは、太陽コロナの詳細な観測を通じて、私たちの日常生活に影響を与える可能性があります

1.宇宙天気予報の精度向上
太陽コロナの詳細な観測により、太陽フレアやコロナ質量放出(CME)のメカニズムがより深く理解され、宇宙天気予報の精度が向上します。
• 衛星通信や無線通信への影響を事前に予測し、対策を講じることが可能になる
• 大規模な太陽嵐による停電リスクを軽減
• 高高度での放射線被ばくリスクの予測精度が向上

2.衛星技術の進歩
Proba-3で実証される精密な編隊飛行技術は、将来の衛星ミッションに応用される可能性があります。
• より高性能なGPS衛星の開発につながり、位置情報サービスの精度向上が期待される
• 地球観測衛星の性能向上により、気象予報の精度が高まる可能性がある

3.太陽エネルギー利用の効率化
太陽活動の理解が深まることで、太陽光発電システムの効率向上や、より正確な発電量予測が可能になる

4.長期的な気候変動研究への貢献
太陽の総エネルギー出力の詳細な測定により、地球の気候変動に対する太陽の影響をより正確に評価できるようになり、将来の気候政策立案に影響を与える可能性がある

これらの影響は、Proba-3ミッションの成功と、そこから得られるデータの解析結果に基づいて、徐々に私たちの日常生活に反映されていくことが期待されます。

このミッションは低コストの小型衛星プロジェクトの一環で、新しい宇宙技術やコンセプトのテストを目的としていて、Proba-3の予定運用期間は2年ですが、過去のProbaミッションの実績から、さらに長期間の運用が期待されています。

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